第6章:褒めるだけでは生徒は育たない?教育コーチングで使える「承認」の技術

いつもご覧いただきありがとうございます。
コーチングですべての中高生に選択肢を与える会社、合同会社ドドド代表の沖津です。
学習塾経営をしながら、全国の学習塾の講師や学校の教員の方々を対象に、コーチング研修をしています。
コーチングの三大スキルである「承認のスキル」について紹介します。承認すると言っても、何をすればいいか分からない方が多いのではないでしょうか。具体的な方法まで詳しく紹介していきます。

この記事で分かること
・教育コーチングにおける承認とは
・褒めると認めるの違い
・先生がやりがちな「善意の否定」
・傾聴と承認のつながり

生徒がテストで80点を取りました。

これは、とても自然な声かけに見えるかもしれません。
ですが、生徒が100点じゃなかったことに悔しがっていたらどうでしょう。
生徒は頑張ったねと言われても、嬉しくないかもしれません。

一方で、テストで40点だったらどうでしょうか。

平均点が30点で、始めて平均点を超えて生徒は嬉しいかもしれません。
勉強していたところはすべて正解していて、頑張ったと思っているかもしれません。

どちらの例も、生徒の感情を汲み取れていない可能性があります。

教育現場では、
「生徒は褒めて伸ばしましょう」
という言葉をよく聞きます。

もちろん、褒めることが悪いわけではありません。

僕も、生徒の頑張りに心から感動したときには、素直に「すごい」と伝えてます。

ただ、教育コーチングで大切にしているのは、「褒める」ことだけではありません。

むしろ、その前に身につけたいのが「承認」です。

生徒がうまくいったときだけではなく、失敗したときも、悩んでいるときも、思うように行動できなかったときも、その生徒の現在地をそのまま受け取る。

それが、教育コーチングにおける承認です。

目次

承認とは「ありのままの事実を認めること」

僕たちの教育コーチング研修では、承認を、
「ありのままの事実をそのまま認めること」
としています。

相手の存在や言動、変化を認めることで安心感を与え、本音を話してもらえる空気をつくることが目的です。

ここで重要なのは、「同意すること」や「肯定すること」、「意見すること」は承認には含まれないという点です。

例えば、生徒が、

と言ったとします。

この言葉に対して、

「そうだよね。受験勉強なんてやらなくてもいいよ」

と言うことが承認ではありません。

これは、生徒の意見に同意しています。

反対に、

「そんなこと言ってる場合じゃないよ。受験生なんだから」

と返せば、生徒の発言を否定しています。

承認では、

と、まずそのまま生徒の発言と感情を受け取ります。

勉強をしなくていいと認めたわけではありません。

ただ、
「今、この生徒はそう感じている」
という事実を認めています。

ここから、

「何があったの?」
「いつ頃からそう感じているの?」

という対話へ進むことができます。

承認は、生徒のすべての意見を肯定することではありません。もちろん否定することでもありません。

本音を話しても大丈夫だと思える入口をつくることです。

「褒める」と「認める」は違う

ここで、「褒める」と「認める」の違いを明確にしていきましょう。

「褒める」は、ポジティブな行動や結果に対して良い評価をすること。

一方、「認める」は、ポジティブなこともネガティブなことも含め、そのまま相手へ伝えることです。

例えば、生徒が前回50点だった数学で80点を取ったとします。

「80点!すごいじゃん!」

これは褒めるです。

一方、

「前回より30点上がったね」

は、起きた変化をそのまま伝えています。

これが承認です。

勉強時間についても同じです。

「今週、毎日3時間も勉強したの?偉いね!」

は褒める。

「先週は4日だったけど、今週は7日間勉強できたね」

は承認です。

では、うまくいかなかった場合はどうでしょうか。

「今週は、予定していた5日のうち2日できたんだね」

これも承認できます。

だからこそ、承認は結果の良し悪しに左右されません。

うまくいっている生徒にも使える。
うまくいっていない生徒にも使える。

教育現場で非常に使いやすいスキルだと思います。

言葉にしないと「承認」は伝わらない

生徒を見ていて、
「最近、自習に来る回数が増えたな」
「前より質問できるようになったな」
「話す表情が明るくなったな」
と思うことがあると思います。

でも、それを先生が心の中で思っているだけでは、生徒には伝わりません。

承認はしっかりと言葉で伝えることが大切です。

例えば、
「最近頑張ってるね」
だけで終わらせず、

「先月より自習に来る日が増えたね」
「前は分からない問題があってもそのまま帰ることが多かったけど、最近は質問してから帰るようになったね」
と伝えます。

先生は毎日生徒を見ているからこそ、小さな変化に気づけます。

その変化を、本人へ言葉で返す。

生徒自身が気づいていなかった成長を、先生から伝えられることもあります。

承認は、特別な言葉を考える必要はありません。

先生が見た事実を、そのまま言葉にするところから始められます。

他の生徒と比べない

承認するときに気をつけたいのが、他者との比較です。

教育コーチングでは、承認に批判や評価、他者との比較を加えないようにします。

それらが含まれると、生徒が安心して話しにくくなるからです。

例えば、
「最近、自習に来るようになったね」
であれば、その生徒自身の変化を伝えています。

しかし、
「最近、自習に来るようになったね。○○君より頑張ってるじゃん」
になると、突然ほかの生徒との比較になります。

「前より英単語を覚えられるようになったね」と、
「クラスの平均より取れてるね」も違います。

承認するときに見るのは、
「他の人より優れているか」
ではありません。

その生徒自身の言動や変化です。
昨日の本人。
先週の本人。
1か月前の本人。

そこから何が変わったのかを伝えていきます。

他の生徒と比較するのではなく、過去のその生徒と比較して、
生徒自身の変化や成長を承認していきましょう。

「とりあえず褒める」をしない

生徒との関係を良くしようとして、
「とにかく何でも褒めよう」
となってしまうことがあります。

しかし、教育コーチングでは「とりあえず褒める」を良しとしていません。

褒めること自体を禁止しているわけではありません。

ただ、心から思っていない褒め言葉は、相手に伝わってしまうことがあるため、本当に感動したときに褒めることを大切にしています。

例えば、生徒が、
「昨日10分だけ勉強しました」
と言ったとします。

先生が、
「えらい!すごい!最高じゃん!」
と大げさに反応したら、生徒はどう感じるでしょうか。

本人自身が、
「10分しかやってないのに」
と思っていれば、先生の言葉に違和感を持つかもしれません。

そんなときは、
「お!昨日は10分勉強できたんだね」
で十分です。

さらに、
「何をやったの?」
と話を聴けばいい。

無理に評価する必要はありません。

結果ではなく行動に対して褒めることで、承認と同じような効果につながることもあります。

結果だけを見て、
「100点だからすごい」
ではなく、

「テスト前の1週間、毎日復習していたね」
と行動を見る。

教育者として、生徒のどこを見ているかが変わります。

「いや」「でも」「だって」に注意する

生徒の話を聴いていると、つい使ってしまう言葉があります。

「いや」「でも」「だって」
です。

これらのセリフは、を承認におけるNGワードとしています。

否定的な発言につながりやすいためです。

例えば、
「今回、数学は頑張ったんですけど、英語は全然できませんでした」
という生徒に、

「でも、もっと単語をやっておけば取れたよね」
と返したとします。

先生が言っていることは正しいかもしれません。

ただ、生徒からすると、
「数学を頑張った」
という話は、一瞬で消えてしまいます。

まずは、
「そうか、数学頑張ったんだね」
と受け取る。

そのあとに、
「英語については、自分では何が足りなかったと思う?」
と進めれば、同じ内容でも対話の印象は変わります。

承認してから、振り返り。
承認してから、次の行動に移す。
承認してから、深堀をする。

この順番を間違えないようにしましょう。

良かれと思った「善意の否定」が本音を止める

承認を考えるうえで、特に僕たちが大切だと思っているのが「善意の否定」です。

例えば、生徒が、
「僕、数学本当に向いてないと思うんですよ」
と言ったとします。

先生は励ましたいので、
「いや、そんなことないよ!」
と言います。

悪意はまったくありません。
むしろ、生徒のことを思って言っています。


一見、よくありそうな会話だと思います。

これこそが、「善意の否定」です。

生徒のネガティブな発言を否定することで、肯定にしようとする発言。
良かれと思ってした否定的な発言。

これを善意の否定といいます。

生徒の否定的な発言に対して、善意の否定をぶつけると、
「いや、本当に向いていないんです。勉強してるつもりなのできないから」
と、さらに生徒から否定的な発言が出てきやすくなります。

このように、善意の否定は、否定のスパイラルに陥りやすいセリフです。

こうならないように、相手から否定的な言葉が出たときには、まず一度その言葉を受け止めます。

例えば、

まず、ここからです。

「今はそう思っているんだね」という言葉

先ほどの、否定的な発言が出たときの具体的な返しとしての、
「今はそう思っているんだね」

相手の言葉を受け止めながら、その感情が現在のものであることも伝える表現です。

例えば、

と言われたら、
「そんなことない。絶対受かるよ」
とすぐに励ますのではなく、

と返す。

すると、

と、その理由を話してくれるかもしれません。

ここから初めて、

と話を深められます。

先生が最初から、
「大丈夫」
という答えを与えるより、
「なぜそう感じているのか」
を理解することが先です。

承認は、生徒を無理に前向きにするための言葉ではありません。

今の生徒を、そのまま見ることから始まります。

傾聴と承認はセットで使う

前回の記事では、傾聴について紹介しました。
傾聴のスキルはこちらをご覧ください。

傾聴と承認は、別々の技術のように見えますが、「切っても切り離せないスキル」です。

生徒の話をしっかり聴く。
その中にある事実や変化を受け取る。

そして、
「そう感じているんだね」
「前よりここが変わったね」
「今日は自分から話してくれたね」
と伝える。

傾聴だけでもなく、承認だけでもありません。

聴いているからこそ、認められることがあります。

例えば、生徒の勉強時間だけ見ていたら、
「今週も全然勉強できていない」
で終わるかもしれません。

でも、話を聴いてみると、
「毎日やるのは無理だったけど、昨日は自分からスマホを置いて30分勉強した」
という変化が出てくるかもしれません。

そこを、
「昨日は、自分からスマホを置いて始められたんだね」
と承認する。

生徒を表面的な結果だけで判断せず、話を聴き、その人の変化を見つける。

この積み重ねが、安心して本音を話せる関係につながります。

生徒を変えようとする前に、今の生徒を認める

先生は、生徒に成長してほしいと思っていると思います。

もっと勉強してほしい。
成績を上げてほしい。
志望校に合格してほしい。

だからこそ、
「こうした方がいい」
「ここを直そう」
と、未来の話をしたくなります。

でも、その前に必要なのが、
「今のあなたをちゃんと見ています」
と伝えることです。

承認は、決して甘やかすことではありません。
何でも肯定することでもありません。

生徒の存在、言動、変化、そして今感じていることを、そのまま受け取ることです。

褒められる結果が出た日だけではなく、
うまくできなかった日も。

前向きな生徒だけではなく、
「もう無理」と言っている生徒も。

まず認める。

その安心感があって初めて、
「じゃあ、ここからどうしようか」
という教育コーチングの対話へ進めます。

生徒を変えることを急ぐ前に、今の生徒を見る。

傾聴し、承認する。

教育コーチングにおける信頼関係は、そんな日々の小さな関わりからつくられていきます。

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この記事を書いた人

沖津 亮佑のアバター 沖津 亮佑 合同会社ドドド 代表

合同会社ドドド代表 | 教育者・親・高校生にコーチングを提供 | 水戸市 大学受験専門塾 | オンライン 薬学部受験専門塾 | 全国の学習塾・学校でコーチング研修実施

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