第12章:「やる気を出せ」は逆効果?生徒のやる気を上げる教育コーチングの考え方

いつもご覧いただきありがとうございます。
コーチングですべての中高生に選択肢を与える会社、合同会社ドドド代表の沖津です。
学習塾経営をしながら、全国の学習塾の講師や学校の教員の方々を対象に、コーチング研修をしています。
生徒のやる気を出すことは非常に難しいです。その難しさは、生徒のやる気の現状把握が不足していることにあります。今回は、やる気の正体からやる気の上げ方まですべて紹介していきます。
この記事で分かること
・モチベーションとやる気の違い
・モチベーションランクの使い方
・「やりたくない」という生徒のやる気を上げる方法
・やる気50%の生徒のやる気の上げ方
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「先生、この子、本当にやる気がないんです」
保護者との面談で、こんな相談を受けることがあります。
宿題をしない。
自習にも行かない。
テスト前なのに勉強しない。
本人に聞いてみても、
「別に」
「無理だと思う」
「やっても変わらない」
と返ってくる。
そんな生徒を見ると、先生としては、
「もっと頑張ろうよ」
「このままだと間に合わないよ」
「やればできるんだから」
と声をかけたくなります。
でも、それで急にやる気が出る生徒はいません。
場合によっては、
「分かってるよ」
「どうせできないし」
と、さらに気持ちが下がってしまうこともあります。
生徒のやる気を考えるときに大切なのは、
「どうやって一気にやる気を出させるか」
ではなく、
「今、この生徒はどんな状態なのか」
を見ることです。
合同会社ドドドの教育コーチング研修では、生徒のやる気を5つの段階に分けて考えます。
今回は、その考え方を教育現場で使いやすい形に整理して紹介します。
「モチベーション」と「やる気」の違い

まず、モチベーションとは何でしょうか。
モチベーションを「動機」、つまり「やる気になるきっかけ」です。
一方、やる気は、
「行動しようと思う気持ち」
です。
つまり、モチベーションが生まれる。
その結果、「やってみようかな」という気持ちが生まれ、
実際の行動につながっていく。
このように違いを考えます。
ここを混同すると、
「やる気がないなら、やる気を出させよう」
という発想になりがちです。
でも、生徒に必要なのは、
「頑張れ」という言葉ではなく、
「行動してみようと思える理由」かもしれません。
例えば、
「英語を勉強しなさい」とやる気を上げようと思うのではなく、
「英語ができるようになったら、どんな選択肢が増えそう?」
とモチベーションを与えようとする。
あるいは、
「志望校に合格したら、何を一番やってみたい?」
と考えてもらう。
行動だけを求めるのではなく、その行動につながる動機をつくっていきます。
生徒の状態を「5つのランク」で見る

僕たちの教育コーチングでは、生徒のやる気を次の5段階に分類しています。
「拒否」
「不可能」
「願望」
「期待」
「可能」
この5つは、あることに対するやる気を数値化し、その数値に合わせて段階を設定したものです。
あることに対するやる気が0%の状態を「拒否」
やる気が20%の状態を「不可能」
やる気が40%の状態を「願望」
やる気が60%の状態を「期待」
やる気が80%の状態を「可能」
とします。
これを僕たちは、『モチベーションランク』と呼んでいます。
なぜ、「やる気ランク」や「やる気の段階」と言わないかって?
モチベーションランクの方がかっこいいし、みなさんの脳に残りやすいからです。
では、もっとイメージがつくように、勉強について考えてみます。
拒否は、
「勉強なんてやりたくない」という状態。
不可能は、
「やっても自分にはできない」という状態。
願望は、
「できたらいいな」という状態。
期待は、
「自分にもできるかもしれない」という状態。
可能は、
「自分ならできそう。やってみよう」という状態です。
同じ「勉強していない生徒」でも、中身は全然違います。
「やりたくない」のか。
「やりたいけれど無理だと思っている」のか。
「できたらいいと思っているけれど自信がない」のか。
それによって、先生がかける言葉も変わります。
だから、生徒のやる気を上げる前に、
「今どこにいるのか」を把握します。
これが最初のステップです。
ランクを一気にやる気を上げようとしない

モチベーションランクを上げることで、生徒のやる気があがっていきます。
しかし、ランクは
1ランクずつ上げる
ことが大切です。
一度に2ランク以上上がることはあり得ることですが、2ランク以上一気に上げてしまうと、一気に下がる可能性が高まるからです。
以前の生徒で、こんな生徒がいました。
私立高校に通う高校2年生。サッカー部。慶應義塾大学志望。
模試の偏差値は60前後をうろうろしているが、部活の引退が他より遅いため、他の部活の生徒よりも本格的に受験勉強を始めるのが遅く、不安に感じていました。
「自分はやっても慶應は無理かもしれない」
まさに、モチベーションランク「不可能」の状態でした。
そんな時、高校のイベントで、「OB訪問」がありました。
その高校の卒業生が受験の時の話をしに来てくれるというイベント。
来てくれたOBは、彼の2つ上の元サッカー部。さらに、慶應義塾大学に進学した卒業生でした。
彼は自分と同じ境遇でも慶應義塾に合格し、OBの方がいつからどのような受験勉強をしてきたのか、ワクワクしながら話を聴いたそうです。
そして、
「自分にもできるかもしれない」
と感じるようになったそうです。
モチベーションランク「期待」の状態です。
そこから彼は部活を頑張りながらも、合間を縫って勉強を続けました。
そして次の模試。結果は偏差値54。
「やっぱり無理じゃん。もう慶應無理だわ。」
モチベーションランクが「拒否」まで下がってしまいました。
こうなってしまった1つの要因は、外的要因によりモチベーションランクが急上昇してしまったことです。
もしもあの時、ランクが1ランクだけしか上がらなかったらこうなっていなかったかもしれません。
もしもあの時、僕がモチベーションランクについて知っていればこうなっていなかったかもしれません。
モチベーションランクの話に戻します。
例えば、
「勉強なんて絶対やりたくない」
と言っている生徒に、
「第一志望に合格した自分を想像してみよう!」
と話したらどうでしょうか。
先生としては前向きな声かけです。
でも、生徒の気持ちとは距離があります。
そんな話されても……」
となるかもしれません。
拒否の状態にいる生徒を、いきなり「できる!」まで持っていこうとしない。
まず、
「やりたくない」から、
「やってもできないと思う」へ。
そこから、
「できたらいいな」へ。
小さく進めます。
この考え方を持っておくだけでも、生徒への関わり方はかなり変わります。
先生側が結果を急ぎすぎないことも、教育コーチングでは大切です。
「やりたくない」生徒には、「やってもできない」と言わせる

拒否の状態にいる生徒は、
「やりたくない」と思っています。
この状態の場合、未来志向・ポジティブ志向のアプローチを急がず、
まず「やりたくない原因」を探ることが大切です。
例えば、
「なんで勉強したくないの?」
「どうだったら、少しだけやってもいいと思える?」
「今まで、やりたくなかったけど仕方なくやったことってある?」
と聞きます。
すると、
「何をやればいいか分からない」
「やっても点数が上がらない」
「親にずっと言われるから嫌になった」
という理由が出るかもしれません。
理由が違えば、対応も違います。
やることが分からないなら、勉強方法を教える。
結果が出ないなら、成功体験をつくる。
周囲から言われすぎているなら、一度本人の気持ちを聴く。
「やりたくない」という言葉だけを見て、
「この子はやる気がない」で終わらせないことです。
その言葉の奥に何があるのかを探ります。
そして、「やってもできないんだもん」という言葉が出てきたら、ランクは1段上がっています。
それでいいんです。
「やらない」という選択しかなかった『拒否』から
「やるorやらない」と選択肢が増えた『不可能』になりました。
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「できない」と思っているのは生徒の解釈

次の段階が、
「自分にはできない」という不可能の状態です。
この生徒は、勉強そのものを拒否しているとは限りません。
本当は、
「できるならやりたい」
と思っていることがあります。
ただ、
「どうせ自分には無理」と思っている。
この段階では、
「できなくはない」
と思えるように関わり、生徒が考えている「事実」と「解釈」を整理することが大切です。
例えば、
「なんで無理だと思ってる?」と聞く。
生徒が、
「数学がずっと30点だから」と答える。
30点だったことは事実です。
でも、
「だから今後も上がらない」は解釈です。
そこで、
「そっか、30点だったからか。じゃあ、今までどんな勉強をしてきた?」
と整理していきます。
あるいは、
「誰とだったらできそう?」
「今まで少しでもうまくいったときはなかった?」
と聞く。
できない理由だけではなく、
「できる可能性」が見える材料を一緒に探します。
目指すのは、
「絶対できる!」
と思わせることではありません。
まず、
「もしかしたら、できなくはないかも」
まで進むことです。
「できたらいいな」を「自分にもできそう」に変える

願望の段階に来ると、生徒は、
「できたらいいな」と思っています。
ここまで来ると、コーチングが非常に使いやすくなります。
願望から期待へ移る段階では、
「何があればもっと自信がつく?」
「それができたら誰に報告したい?」
などの問いかけ有効です。
例えば、
「英語で60点取れたらいいな」と言う生徒に、
「何ができるようになったら、60点取れそうって思える?」と聞く。
「英単語を覚えられたら」と答える。
「じゃあ、どのくらい覚えられたら自信つきそう?」と続ける。
少しずつ、
「できたらいいな」
という漠然とした願望を、
「これをやれば、できるかもしれない」
という期待に変えていきます。
そして期待の段階から、
「よし、自分にもできる」
という可能の状態へ進んだら、次は行動です。
「今週は何ができそう?」
「明日一つやるなら何をする?」
と具体的な行動につなげます。
ここまで来た生徒は、先生から毎回、
「勉強しなさい」と言われなくても、自分から動き始めます。
生徒の「やる気」を上げるより、ランクを一段上へ進める

先生をしていると、
「この子のやる気をどうやって上げよう」と悩むことがあります。
でも、
「やる気がある・ない」
の2択で考えると、関わり方が難しくなります。
拒否なのか。
不可能なのか。
願望なのか。
期待なのか。
可能なのか。
まず、生徒が今いる場所を見る。
そして、
「次の一段に進むには、何が必要だろう」と考える。
やりたくない生徒には、やりたくない理由を聴く。
できないと思っている生徒には、「本当にできないのか」を一緒に整理する。
できたらいいと思っている生徒には、可能性を具体的にする。
できそうと思っている生徒には、最初の行動を決める。
この順番です。
教育コーチングは、無理やり生徒を前向きにする技術ではありません。
生徒の今の状態を理解し、その生徒が無理なく次の段階へ進めるように支援するものです。
僕は、
「やる気を出させる」よりも、
「一段だけ前に進んでもらう」
という考え方の方が、教育現場ではずっと実践しやすいと思っています。
小さな変化を積み重ねた先に、
「自分ならできる」と生徒自身が思える状態をつくる。
そこまで伴走することが、教育コーチングにおけるモチベーション支援です。
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