第10章:初対面の生徒と信頼関係を築くには?教育コーチングで意識したい6つのポイント

いつもご覧いただきありがとうございます。
コーチングですべての中高生に選択肢を与える会社、合同会社ドドド代表の沖津です。
学習塾経営をしながら、全国の学習塾の講師や学校の教員の方々を対象に、コーチング研修をしています。
信頼関係を築くには、一番最初の印象がとても大切です。初対面で信頼関係を築けるかどうかが分かる6つのポイントを紹介します。
この記事で分かること
・安心感を与える座り位置
・生徒が安心する環境作り
・名前を呼ぶコーチング
・初対面だから気を付けたいこと
※強引な勧誘は一切ございません
初めて会う生徒との面談。
先生としては、
「困っていることを聞きたい」
「志望校について話したい」
「今の成績や勉強状況を知りたい」
と思っています。
でも、生徒側からするとどうでしょうか。
初めて来た塾。初めて会う先生。
場合によっては、隣には保護者もいる。
そんな状況で、
「今の成績は?」
「志望校は?」
「勉強時間は?」
と次々に質問されたら、緊張するのは自然なことです。
特に、保護者に連れられて来た生徒の場合、
「自分は別に来たかったわけじゃない」
「何を話せばいいのか分からない」
と思っているかもしれません。
そんな状態で、どれだけ良い質問をしても、本音はなかなか出てきません。
教育コーチングでは、
「何を聞くか」
りも先に、
「この先生なら話しても大丈夫」
と思ってもらうことが必要です。
今回は、僕が教育現場でも特に大切だと思う6つのポイントに整理して紹介します。
まず「何を話すか」より「どこでどう座るか」を考える

初対面の面談というと、
「どんな質問をするか」
「何を話すか」
に意識が向きがちです。
でも、その前に考えたいことがあります。
それが「座る位置」です。
座る位置関係によって、生徒に与える安心感が変わります。
例えば三者面談では、4人掛けのテーブルに座って話をすることが多いと思います。
その際、先生の正面に保護者、斜め向かいに生徒が座る形が、生徒に安心感を与える最適な座り位置です。
ちなみに、先生の正面に生徒が座ると、生徒に緊張感を与えます。
また、生徒との二者面談や立ち話でも、お互いが真正面から向き合わない状態を意図的につくります。
例えば、初対面の生徒と小さな机を挟み、先生と生徒が真正面から向き合っている状況があるとします。
先生は真剣な表情で、
「今日はどうして塾に来たの?」
と聞く。
先生としては普通に質問しているだけでも、生徒からすると、
「面接みたい」
と感じるかもしれません。
少し斜めに座る。
隣り合いすぎない。
真正面から見つめ続けない。
それだけでも、圧迫感は変わります。
僕は、面談の内容だけではなく、
「この空間は話しやすいか」
を見ることが大切だと思っています。
教育コーチングは、質問をした瞬間から始まるのではありません。
生徒が部屋に入り、椅子に座ったところから始まっています。
メモを取りすぎると「調査されている感」が出る

初回面談では、知りたい情報がたくさんあります。
志望校。
学校名。
成績。
模試結果。
得意科目。
苦手科目。
勉強時間。
部活動。
先生としては、忘れないために全部メモしたくなります。
ただ、初対面の面談ではできるだけメモを取らないようにすることで、生徒に安心感を与えます。
なぜなら、相手が話すたびに先生がメモをしていると、取り締まりや調査のような緊張感を与えることがあるからです。
例えば、
「数学は苦手です」
カリカリカリ。
「英語も最近下がってきました」
カリカリカリ。
「家だとあんまり勉強できなくて」
カリカリカリ。
こうなると、生徒は、
「全部記録されてる。どうしよう。」
という感覚になるかもしれません。
もちろん、必要な情報を残すことは大切です。
だから、どうしてもメモが必要なら、
「今言ってくれた志望校、メモしてもいい?」
と確認します。
この一言だけでも、
「勝手に情報を取られている」
から、
「自分が許可したことを記録している」
に変わります。
初対面では、先生にとって効率的かどうかより、生徒が安心できるかどうかを優先した方が、その後の対話は深くなります。
名前を呼ぶだけでも「自分を見てくれている」が伝わる

初対面では、意識して生徒の名前を呼ぶことも大切です。
1対1の会話では、相手の名前を呼ばなくてもスムーズにコミュニケーションをとることはできます。
しかし、あえて目の前にいる生徒の名前を呼ぶことで、
「認められている」と感じやすく、会話の中に適度に名前を入れることで信頼関係を築きやすくなります。
例えば、
「どう思う?」
と聞くのと、
「○○君はどう思う?」
と聞く。
言っていることは同じです。
でも、少し印象が違います。
「今日は来てくれてありがとう」
より、
「○○さん、今日は来てくれてありがとう」
の方が、自分に向けて言われている感じがします。
もちろん、毎回名前を呼べばいいわけではありません。
「○○君はどう思う? ○○君は何が好き? ○○君はどこ行きたい?」
となれば、不自然です。
あくまで適度に使います。
教育コーチングでは、生徒を「成績」や「受験生」という属性として見るのではなく、一人の人として見ることが大切です。
名前を呼ぶことは、その姿勢を伝える小さな方法の1つです。
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相手に合わせる「MPR」で話しやすい空気をつくる

初対面で信頼関係をつくるうえで、第5記事でも紹介したMPRはとても役立ちます。
MPRとは、
ミラーリング。
ペーシング。
リフレイン。
の頭文字を取ったものです。
初対面の場面ではMPRを意識し、3つすべてが難しければ、ミラーリング→ペーシング→リフレインの順で少しずつ意識を増やしていきましょう。
例えば、かなり緊張して、小さな声でゆっくり話す生徒がいます。
そこに先生が、
「なるほど!それで!?学校どうなの!?」
と大きな声でテンポよく返したら、少し圧を感じるかもしれません。
相手がゆっくりなら、こちらも少しゆっくり。
相手が静かなトーンなら、こちらも少し落ち着いて話す。
これがペーシングです。
また、
「最近、学校がちょっと疲れるんですよね」
と言われたら、
「学校、ちょっと疲れるんだね」
と返す。
リフレインです。
相手の姿勢や距離感も自然に合わせる。
ミラーリングです。
これらは、生徒を操作するテクニックではありません。
「あなたのペースで話していいよ」
というメッセージを、言葉以外でも伝えるためのものです。
初対面だからこそ、先生のペースへ引っ張るのではなく、まず生徒のペースに合わせる。
そこから対話が始まります。
初対面でも、生徒の発言をすぐ否定しない

初回面談で、生徒からこんな言葉が出ることがあります。
「別に大学行かなくてもいいと思ってます」
「勉強嫌いです」
「今の学校も本当は行きたくなかったです」
「第一志望はもう無理だと思います」
先生としては、
「そんなことないよ」
「今から頑張れば大丈夫」
「大学には行った方がいいよ」
と言いたくなることもあると思います。
でも、初対面では特に、最初から否定すると、その後の本音が出にくくなることがあります。
生徒からどんな発言が出ても、まず否定せずに認めることを重視します。
ただ、
「否定をしない」
ことと、
「肯定をする」
ことは別です。
例えば、
「大学行きたくないです」
と言われたからといって、
「じゃあ行かなくていいよ」
と言う必要はありません。
まず、
「今は、大学には行きたくないと思ってるんだね」
と受け取ります。
「何か理由がある?」
と聞く。
すると、
「勉強が嫌いだから」
「行きたい大学がないから」
「親に言われてるだけだから」
と、本当の理由が出てくるかもしれません。
先生が最初に正論を返してしまったら、その理由まで聞けなかった可能性があります。
初対面では、
「この先生に本音を言ったら否定される」
と思われないことが、とても重要です。
すぐ変えようとしない。
まず理解する。
その順番が、信頼関係をつくります。
これは初対面の生徒に限らず意識したいですね。
質問や提案の前に「断りを入れる」

初対面で特に大切なのが、
「断りを入れる」
ことです。
相手の思考に入る前に、いったん許可を取ります。
例えば、
「最近の勉強時間は?」
と突然聞くのではなく、
「○○君の今の勉強について、少し聞いてもいい?」
と聞く。
「志望校はどこ?」
ではなく、
「進路についても少し聞いていい?」
と聞く。
さらに踏み込むなら、
「もう少し詳しく聞いても大丈夫?」
と確認する。
先生からすると、
「そこまで毎回確認しなくてもいいのでは」
と思うかもしれません。
でも、初対面の生徒にとっては違います。
先生と生徒という関係には、どうしても力の差があります。
質問されたら、
「答えなければいけない」
と思う生徒もいます。
「答えさせられている」と感じる生徒もいるかもしれません。
そういった感情を出来るだけ与えないために、
「○○さんの学習状況について少し質問させてもらうね」
「○○についてもう少し聴かせてもらってもいい?」
といった表現を使います。
この一言によって、生徒は、
「自分の気持ちを尊重してくれている」
と感じやすくなります。
ここで、第9記事で扱った「リクエスト」にも注意が必要です。
先生は、生徒の話を10分ほど聞いただけでも、
「この子はこうした方がいい」
と見えてくることがあると思います。
「毎日自習に来た方がいい」
「この教材を使った方がいい」
「スマホを減らした方がいい」
先生としては、生徒のためを思って言っています。
ですが、初対面では求められない限りリクエスト(提案)を控えることで、信頼関係の土台を作ります。
リクエストは信頼関係が構築されているからこそ効果を発揮するスキルであり、初対面から提案を重ねることで、作りかけた信頼を崩す場合があります。
例えば、初めて会って10分で、
「君は毎日2時間は勉強した方がいいよ」
と言われる。
生徒からすると、
「まだ自分のこと何も知らないのに」
と思うかもしれません。
だから、まず聴く。
認める。
理解する。
もし提案するなら、
「今までの話を聞いて、1つ僕からできそうな提案があるんだけど、話してもいい?」
と断りを入れる。
初対面だからこそ、
「先生が正しいことを言う」
より、
「この先生は自分の話をちゃんと聞いてくれる」
と思ってもらうことを優先します。
生徒から、「どうすればいいですか?」
と、助言を求められた時は、全力で提案や助言をしましょう。
信頼関係は「良い質問」だけではつくれない
教育コーチングというと、
「どんな質問をすれば生徒の本音を引き出せるか」
に注目されがちです。
でも、生徒が本音を話すかどうかは、質問だけでは決まりません。
真正面から圧を感じる座り方になっていないか。
ずっとメモを取って、調査のような雰囲気になっていないか。
名前を呼び、1人の人として接しているか。
相手のペースに合わせているか。
意見をすぐ否定していないか。
質問や提案の前に、相手の意思を確認しているか。
こうした小さなことの積み重ねで、
「この先生なら話してもいい」
という感覚が生まれます。
信頼関係のない状態では、生徒は大人の顔色を見ながら発言することがあります。
信頼関係がなければ、コーチングスキルが優れていても本音を引き出すことは難しいです。
教育コーチングは、生徒から答えを引き出す技術です。
でも、その前に、
「何を言っても大丈夫」
と思える関係や環境が必要です。
初対面の面談で目指したいのは、
その場で生徒を変えることではありません。
その場ですべての課題を解決することでもありません。
まず、
「この先生なら、また話してもいいかもしれない」
と思ってもらうこと。
そこから、本当の教育コーチングが始まります。
※強引な勧誘は一切ございません
