第7章:生徒が自分で答えを見つける質問とは?教育コーチングで使える「質問」の技術

いつもご覧いただきありがとうございます。
コーチングですべての中高生に選択肢を与える会社、合同会社ドドド代表の沖津です。
学習塾経営をしながら、全国の学習塾の講師や学校の教員の方々を対象に、コーチング研修をしています。
教育コーチングでは、生徒からの発言や思考を引き出すことがとても大事です。引き出すための手段として、質問のスキルを使うことが多いです。コーチングによる質問のスキルをたくさん紹介します。
この記事で分かること
・コーチングにおける質問とは
・良い質問とはどういう質問か
・オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの使い分け
・理想的な質問の流れ
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「今週はちゃんと勉強できた?」
ー「はい」
「宿題は終わった?」
ー「はい」
「次のテストは頑張れそう?」
ー「はい」
先生はたくさん質問している。
でも、生徒から返ってくるのは「はい」「いいえ」「分かりません」ばかり。
こんな面談になってしまうことがあります。
反対に、
「最近どう?」
「勉強についてどう思ってる?」
「将来どうしたい?」
と質問しても、
「普通です」
「分かりません」
と返ってくることもあります。
すると、
「この生徒は自分のことを話してくれない」
「もっと良い質問を考えないといけない」
と思ってしまいます。
しかし、教育コーチングにおける質問は、「すごい質問を思いつくこと」が目的ではありません。
質問によって、生徒自身に考えてもらう。
考えたことを言葉にしてもらう。
そして、生徒が自分ではまだ気づいていなかった考えや、次に取るべき行動を見つけてもらう。
これが、教育コーチングにおける質問です。
コーチングで大切な質問の仕や、質問の種類を紹介します。
質問の目的は「情報収集」ではなく「気づき」を引き出すこと
先生は普段から、生徒にたくさん質問していると思います。
「学校は何時に終わったの?」
「宿題はどこまでやった?」
「次の模試はいつ?」
「数学は何点だった?」
これらも、もちろん質問です。
ただ、これらの質問の主な目的は「先生が必要な情報を知ること」になっています。
一方、教育コーチングによる質問の目的は「生徒自身に考えてもらうこと」です。
例えば、
「今回のテストで、一番変えたいところはどこ?」
「前回よりうまくいったことは何?」
「今の勉強方法を一つだけ変えるなら、何を変える?」
と聞いてみる。
先生が答えを知るためだけではありません。
質問された生徒自身が、
「うーん。何だろう?」
と考えます。
そして、
「そういえば、今回は数学の勉強を始めるのが遅かったかもしれない」
と、自分の行動に気づくことがあります。
ここに、質問の大きな価値があります。
先生が、
「数学を始めるのが遅かったよね」
と伝えることもできます。
でも、
「何が原因だったと思う?」
と聞かれ、生徒自身が、
「始めるのが遅かった」
と言葉にする。
同じ内容でも、生徒にとっての受け取り方は変わります。
教育コーチングの質問は、先生が正解を言わせるためのものではありません。
生徒自身が、自分の答えに気づくためのものです。
一度にたくさん質問しない

面談や授業をしていると、先生側には聞きたいことが次々と浮かびます。
「今回のテストどうだった?何が良かった?何が悪かった?次どうする?」
一度に聞きたくなります。
しかし、生徒からすると、
「どれから答えればいいんだろう」
となってしまいます。
特に、自分の考えを言葉にすることに慣れていない生徒にとって、複数の質問を一度にされることは大きな負担です。
だから質問は、必ず1つずつします。
「今回のテスト、自分ではどうだった?」
まず待つ。
「数学は良かったです」
「いいね、数学は良かったんだね。何がうまくいったと思う?」
また待つ。
「今回はワークを2周できました」
「そうなんだ。2周できたのは、前回と何が違った?」
このように、1つの答えを受け取ってから、次の質問へ進みます。
先生が質問を重ねるのではなく、生徒の答えに合わせて対話を進める。
そのためには、以前紹介した「傾聴」のスキルが欠かせません。
良い質問は、意外とシンプル
コーチングを学び始めると、
「深い質問をしなければ」
「生徒がハッとするような質問を考えなければ」
と思うことがあります。
でも、質問は複雑である必要はありません。
むしろ、
「どうしたい?」
「何ができそう?」
「他には?」
「いつからやる?」
「今はどう思ってる?」
といったシンプルな質問が、教育現場ではとても使いやすいですし、生徒のためになる質問です。
生徒が質問の意味を考えなければいけないほど複雑にすると、「質問を理解すること」に頭を使ってしまいます。
質問で考えてほしいのは、質問そのものではなく、自分自身についてです。
だからこそ、端的で分かりやすい言葉を使います。
「良い質問をする」よりも、
「生徒が考えやすい質問をする」
と捉えた方が、教育コーチングでは実践しやすいです。
オープンクエスチョンで、生徒の考えを広げる

質問はすべて、
「オープンクエスチョン」と、「クローズドクエスチョン」に分類することができます。
オープンクエスチョンは、「はい」「いいえ」だけでは答えられない質問です。
口をオープンしないと答えられない質問なので、オープンクエスチョンと言います。
例えば、
「今回のテストをどう感じた?」
「次は何を変えたい?」
「志望校に合格したら、どんな高校生活を送りたい?」
といった質問です。
答えが無数にあるので、生徒自身が考える必要があります。
そのため、気づきを引き出したり、生徒の考えを広げたりする場面では、とても重要な質問です。
一方で、クローズドクエスチョンは、「はい」「いいえ」だけで答えられる質問です。
口を閉じたままでも、首を縦や横に振ることで、回答できる質問のことです。
例えば、
「昨日勉強した?」
「次は頑張れる?」
「今から英単語の勉強する?」
といった質問です。
答えが1つか2つに絞られるので、生徒はほとんど考える必要はありません。
気づきを引き出すことはできませんが、会話のリズムを作るのには有効な質問です。
例えば、
「来週、自習に来る?」
であれば、
「はい」/「いいえ」
と返事が返ってきて、
「今日くらいに来る?」/「明日は来る?」
と質問することで、
「はい」/「いいえ」
と返ってきます。
短時間で、会話のラリーをたくさん作ることができます。
でも、
「来週は、どんなふうに勉強を進めたい?」
と聞けば、
「学校帰りに塾に来て、数学をやろうと思います」
という答えが返ってくるかもしれません。
そこには、生徒自身が考えた答えがあります。
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オープンクエスチョンがいつでも正解とは限らない
一般的なコーチングでは、オープンクエスチョンをできるだけたくさん活用しましょうと言われます
ですが、教育コーチングではそうではありません。
例えば、入塾したばかりで、先生との会話にかなり緊張している生徒に、
「これから塾でどんな自分になっていきたい?」
と聞いたとします。
生徒からすると、
「いきなりそんなこと聞かれても……」
となるかもしれません。
また、高校についてほとんど知らない生徒に、
「どんな高校へ行きたい?」
と聞いても、考える材料がありません。
そんなときには、クローズドクエスチョンも使います。
例えば、
「高校を選ぶなら、部活動は大事?」
「はい」
「進学校と、部活動がかなり盛んな学校だったら、どっちの方が気になる?」
「部活が盛んな方です」
「なるほど。どんなところが魅力?」
このように、少しずつオープンクエスチョンへ広げていくことができます。
質問に答えることに慣れていない生徒に、いきなり答えの幅が無限にある質問を投げても困らせてしまいます。
クローズドクエスチョンで答えやすい入口をつくり、そこから少しずつオープンクエスチョンへ移る。
質問も、生徒に合わせて使い分けることが大切です。
「なんで?」が詰問に聞こえることがある

先生にとって、どんな場面でも使いやすい質問があります。
それは、
「なんで?」
という質問です。
「なんで宿題やらなかったの?」
「なんで自習に来なかったの?」
「なんでこの高校に行きたいの?」
同じ「なんで」でも意味はさまざまです。
ただ、生徒にとって「なんで?」という言葉が、
「なんでそんなこともできないの?」
「なんで自分でいったことできないの?」
という詰問のように聞こえることがあります。
特に、できなかったことについて聞く場合は注意が必要です。
例えば、
「なんで英単語やらなかったの?」
と言われるのと、
「英単語をやれなかった原因って何かな?」
では、少し印象が違います。
あるいは、
「何があった?」
「やろうと思ったとき、どんな状況だった?」
と聞くこともできます。
同じ意図の質問でも、質問の仕方によって、生徒が答えやすいかどうかは大きく変わります。
教育コーチングでは、生徒から答えを無理に聞き出すのではなく、
「考えても大丈夫」
「正直に話しても大丈夫」
と思える問いかけを意識します。
詰問になりうる、「なんで?」以外の疑問詞を使った質問をすることで、
生徒にとって、何でも話せる環境になります。
「他には?」で思考の幅を広げる

僕が教育現場でも使いやすいと思う質問の1つが、
「他には?」
という質問です。
例えば、
「次のテストまでにできることは何がある?」
と聞くと、
「学校のワークをやります」
と答えたとします。
ここですぐに、
「わかった、じゃあワークをやろう」
と決めることもできます。
でも、
「いいね、ワークやろう。他には?」
と聞いてみる。
「英単語もやります」
「おー、英単語!他には何が出来る?」
「塾で分からないところを質問します」
このように、1つの問いから複数の選択肢を出してもらう質問を、「水平質問」と呼びます。
1つ目に出てきた答えよりも、2つ目3つ目に出てきた質問の方が、その生徒にとって1番良い答えである可能性が高いです。
複数の選択肢を出すことで、生徒の思考の幅を広げます。
そして、
「今出た3つの中で、一番優先したいものはどれ?」
と決める。
自分で選択肢を出し、その中から自分で選ぶ。
この過程そのものが、自分で考えて行動する練習になります。
答えが出たら、垂直質問で具体的にする

水平質問で選択肢を広げたら、次は1つの答えを深掘りします。
これが「垂直質問」です。
例えば、
「英単語」
という行動が、1番大事だと生徒が言ったとします。
でも、このままではまだ曖昧です。
そこで、
「いつからやる?」
「どこでやる?」
「1日どのくらいやる?」
「いつまでに1周終わらせる?」
「それをするために必要なものは?」
と、1つずつ質問をします。
すると、
「明日から始める」
「学校から帰ったら塾でやる」
「1日30単語進める」
「テスト1週間前までに1周終わらせる」
と、行動が具体的になっていきます。
「英単語を頑張る」
と、
「明日から毎日30単語覚える」
では、実行のしやすさが大きく違います。
質問によって、生徒の頭の中に「実際に行動している自分」をイメージしてもらう。
ここまで具体的になって初めて、対話が行動へつながります。
「広げる→選ぶ→深める→行動する」

水平質問と垂直質問を組み合わせると、面談がとても進めやすくなります。
例えば、
「英語の点数を上げるために、何ができそう?」
「うーん、英単語を覚えます」
「いいね、英単語やろう。他には?」
「教科書の長文を読みます」
「長文ね。他には?」
「最近やった文法を復習します」
ここまでが、考えを広げる段階です。
次に、
「英単語、長文、文法、この3つだったら、今一番優先したいのはどれ?」
「配点が大きいので長文です」
生徒が1つ選びます。
そして、
「じゃあ長文の勉強はいつからやる?」
「もう、今日からやります」
「今日から頑張ろう!1日どのくらいやる?」
「えーっと、2ページずつやろうと思います」
「いいねぇ、どこでやる?」
「学校から帰って、塾に来たときにやります」
このように、垂直質問で深掘りしていきます。
そして最後には、
「じゃあ今日からやってみよう!」
と行動へつなげる。
「広げる」
「選ぶ」
「深める」
「行動する」
この流れを持っておくだけでも、生徒との面談はかなり整理しやすくなります。
生徒も先生も知らない「未知の答え」を一緒に探す

質問には、先生自身も答えを知らないものがあります。
例えば、
「5年後、どんな自分になっていたい?」
という質問。
先生にも答えは分かりません。
場合によっては、生徒自身もまだ分かっていません。
でも、質問されたことで初めて考えます。
「大学には行っていたい」
「好きなことを見つけたい」
「今より自信を持っていたい」
それまで本人の中にも明確には存在していなかった答えが、対話の中で少しずつ形になることがあります。
このような、回答者も質問者も、その答えをまだ知らないような質問を、
未知の窓の質問と言います。
教育コーチングの面白さは、先生が知っている正解へ生徒を誘導することだけではありません。
先生も生徒もまだ知らなかった答えを、一緒に見つけることができることです。
質問より先に、傾聴と承認がある

ここまでさまざまな質問方法を紹介してきました。
でも、質問のスキルだけを覚えても、教育コーチングはうまくいきません。
例えば、生徒が、
「最近、本当に勉強がしんどいです」
と言った直後に、
「じゃあどうしたら勉強できると思う?」
と聞いたらどうでしょうか。
質問としては間違っていなくても、生徒は、
「しんどいって言ったことは聞いてくれなかったんだ」
と感じるかもしれません。
まず、
「そっかー、最近、勉強がしんどいんだね」
と受け止める。
「どんなときに一番しんどいって感じるの?」
と、話を聴く。
そのうえで、
「少し変えられるとしたら、何を変えたい?」
と質問する。
傾聴、承認。
その土台があって、その先に質問があります。
質問で生徒を動かそうとするのではありません。
聴いて、認めて、信頼関係をつくったうえで、生徒が自分自身について考えるきっかけを渡します。
良い質問とは、生徒が話したくなる質問

教育コーチングを学ぶと、
「どんな質問をすれば正解なんだろう」
と考えたくなります。
でも、質問に絶対的な正解があるわけではありません。
同じ質問でも、
ある生徒には深く響き、
別の生徒には答えづらいことがあります。
大切なのは、
「この質問は、生徒が考えやすいだろうか」
「今、この生徒に必要な質問だろうか」
と考えることです。
答えづらそうなら、クローズドクエスチョンに変える。
考えが1つしか出ていないなら、「他には?」と広げる。
答えが曖昧なら、「いつ?」「どこで?」「どのくらい?」と具体的にする。
そして、質問をしたら待つ。
生徒の答えを聴く。
出てきた言葉を認める。
そこから、次の質問を考える。
良い質問とは、先生が準備してきた格好いい質問ではありません。
その生徒との対話の中から生まれる質問です。
先生が答えを与えるだけではなく、生徒自身が、
「自分はこうしたい」
「これならできそう」
「じゃあ、やってみよう」
と、自分の答えを言葉にできるようになる。
そのきっかけをつくることが、教育コーチングにおける質問の役割です。
傾聴によって生徒の言葉を聴き、
承認によってその言葉を受け止め、
質問によって、さらにその先にある答えを一緒に探していく。
この3つがそろって初めて、教育コーチングの三大スキルが、生徒の行動を変える力になっていきます。
※強引な勧誘は一切ございません
