第1章:教育コーチングとは?生徒が自ら考え、勉強するようになる指導の基本

いつもご覧いただきありがとうございます。
コーチングですべての中高生に選択肢を与える会社、合同会社ドドド代表の沖津です。
学習塾経営をしながら、全国の学習塾の講師や学校の教員の方々を対象に、コーチング研修をしています。
学習塾におけるコーチングと、一般的なコーチングは異なります。合同会社ドドドで提供している教育コーチングを、全14章に分けて紹介します。

この記事で分かること
・教育コーチングの定義と語源
・コーチングを活用した会話例
・生徒の行動を変える声掛け
・教えることと教えないことの違い

「何度言っても、生徒が勉強してくれない」
「面談では『頑張ります』と言うのに、次の週には元に戻っている」
「やる気がないのか、あるのか分からない」

学習塾で生徒を指導していると、このような悩みを感じることがあります。

宿題の内容を決める。自習に来る曜日を決める。使用する教材を決める。いつまでに何を終わらせるのかを決める。

先生がすべてを決めれば、その場では生徒を動かすことができることもあるかもしれません。

しかし、先生の指示がなくなった途端に、生徒の行動も止まってしまうことがあります。

生徒はずっと塾にいるわけではないので、塾以外での学習をどうサポートするかがとても大切です。

ただ、教育コーチングは、生徒に何も教えず、すべてを本人に任せる指導ではありません。

必要な知識や勉強方法は先生が教えながら、生徒が自分で目標を考え、次の行動を決め、学習を継続できるように支援する指導です。

目次

教育コーチングとは何か

合同会社ドドドでは、教育コーチングを次のように定義しています。

成績向上のために対話によって対象者を勇気づけ、気づきを引き出し自律学習を促す指導スキル」

教育コーチングという言葉を聞くと、生徒の話を優しく聞いたり、やる気を引き出したりするコミュニケーションを想像するかもしれません。

しかし、合同会社ドドドが考える教育コーチングは、単なるコミュニケーションスキルではありません。

学習塾で行う以上、最終的には生徒の学習行動を変え、成績向上や志望校合格につなげる必要があります。

ただ話を聞いて、生徒の気持ちが軽くなれば終わりではありません。

対話によって生徒の現状を整理し、課題に気づいてもらい、次に何をするのかを具体的にする。

そして、生徒自身が決めた行動を実行し、振り返りながら改善していく。

最終的に、結果を出す。

ここまでが、教育コーチングです。

コーチの語源は「馬車」

コーチングを知る上で、コーチングの語源を知っておきましょう。

「コーチ」という言葉の語源は、馬車だと言われています。

ハンガリーの「コチ」という地域があります。

コチは昔、馬車の製造が盛んな地域でした。

そして、コチで製造された馬車をコーチと呼ぶようになりました。

馬車には、大切な人を、その人が望む場所まで送り届ける役割があります。

この考え方を教育に置き換えると、教育者の役割が見えてきます。

大切な人は、生徒です。

望む場所は、志望校かもしれません。
成績を上げることかもしれません。
自信を持てるようになることや、自分で勉強できるようになることかもしれません。

ここで重要なのは、先生が行かせたい場所ではなく、「その人が望む場所」へ送り届けることです。

先生が良いと思う学校を押しつけたり、先生が正しいと思う学習方法だけをやらせたりすることが、必ずしもコーチングになるわけではありません。

生徒がどこへ行きたいのかを確認し、そこへ向かうために必要な支援をすることが、教育者としてのコーチの役割です。

「自立」と「自律」は違う

コーチングの定義をより深堀していきます。

教育コーチングでは、生徒の「自律学習」を促すことを大切にしています。

自立と自律は、同じ読み方をしますが、意味は異なります。

自立とは、他人の助けを受けずに、自分の力で物事を進められる状態です。

一方、自律とは、自分で決めた基準や目標に従って、自分の行動を調整できる状態です。

学習において大切なのは、何でも一人でできるようになることではありません。

分からない問題があれば、先生に質問しても構いません。必要な教材が分からなければ、先生に提案してもらっても構いません。

大切なのは、必要なときに助けを求めることも含めて、自分の目標に向けて行動を選べることです。

例えば、先生から、
「毎日、英単語を50個やりなさい」
と言われた生徒がいたとします。
その先生からの指示を受けた生徒は、先生の指示がなくなれば止まってしまう可能性があります。

一方で、
「志望校に合格するために、12月までにこの単語帳を仕上げたい。だから毎日50個ずつ進める」
と生徒自身が考え、発言した場合は、その行動の意味を理解しています。
つまり、塾にいない時でも止まらず学習を継続することができます。

同じ50個の英単語でも、行動の主体が違います。

教育コーチングが目指すのは、先生の指示があるから勉強する生徒ではなく、自分の目標に必要だから勉強する生徒です。

先生が決める会話と、生徒が決める会話

教育コーチングを理解するには、実際の会話を比較すると分かりやすくなります。

例えば、生徒が偏差値55のA高校を志望しており、現在の模試の偏差値が48だったとします。

先生が主導する会話では、次のようになりがちです。

先生が考えていること自体は、間違っていません。

偏差値を7上げるためには、学習量を増やす必要があるでしょう。
自習に来た方が、質問もしやすくなるかもしれません。

しかし、この会話では、先生が現状を判断し、先生が解決策を考え、先生が行動開始日まで決めています。

このような問いかけをされた生徒の返事は、

という受け身のものになっています。

生徒が自習へ来ると約束したとしても、自分で必要性を感じて決めたわけではありません。
そのため、実際に行動するかどうかは分かりません。

一方、コーチングを取り入れた会話では、まず志望理由を確認します。

生徒は、

と答えます。

次に、現在の課題を本人に話してもらいます。

先生が「偏差値が足りない」と指摘したのではありません。
生徒自身が、志望校と現在地の差を言葉にしています。

さらに先生は質問します。

生徒は、英語が苦手なので英単語を始めたと答えます。

このように対話を続けることで、生徒自身が、目標達成に必要な行動を考え始めます。

数学についても、

と質問すると、

という答えが出てきます。
そして、いつから始めるのか、どこで取り組むのかも、生徒自身が決めていきます。

最終的に生徒は、

と話します。

先生から「塾へ来なさい」と言われたのではありません。
質問を通して、自分に必要な行動を考えた結果、本人が塾で勉強すると決めています。

最後に先生はこう伝えます。

生徒の変化をキャッチして、感じたことをそのまま言葉にして伝えます。

そうすると生徒は、

と、自分の変化に気づけます。
この気づきが、生徒の成長につながります。

自分の言葉が、自分の行動を変える

先ほどの会話例からも分かるように、
人は、他人から言われたことよりも、自分で言葉にしたことの方が、行動に移しやすくなります。

自分が話した言葉を、自分の耳でも聞くことで、頭の中が整理され、新しい気づきが生まれることがあります。

これをオートクライン効果と呼びます。

「A高校に行きたい」
「偏差値が7足りない」
「英単語を12月までに仕上げる」
「数学は関数を復習する」
「月曜日から塾で始める」

これらを先生が一方的に伝えるのではなく、生徒自身が順番に話していくことで、目標と行動がつながっていきます。

対話の最後、生徒は、
「やることが決まって、少し安心した気がします」
と話しています。

先生に叱られて仕方なく行動を決めたのではありません。

自分の頭の中が整理され、何をすればよいかが見えたことで、不安が小さくなったのです。

このオートクライン効果を狙うことも、コーチングではとても大切です。

コーチングだけですべてを解決しない

ここで注意したいのは、教育コーチングでは、先生が一切答えを教えてはいけないわけではないことです。

一般的なコーチングでは、相手の中に答えがあるという前提で、コーチが答えを教えずに対話を進めます。

しかし、教育現場では、生徒の経験が少なく、生徒自身が答えを持っていないこともあります。

英単語の覚え方を知らない生徒に、質問だけを続けても適切な方法は出てきません。
志望校の入試制度を知らない生徒に、
「どう受験したい?」
と聞くだけでは、選択肢を考えられません。

生徒が間違った方法で勉強している場合や、入試まで時間がない場合には、先生が知識や方法を教える必要があります。

教育者には、コーチとして問いかける立場と、先生として教える立場の両方があります。

生徒がすでに答えを持っている場面では、質問によって引き出す。
知識や経験が不足している場面では、先生が教える。

この2つを行き来することが、教育コーチングで最も重要なポイントです。

教育コーチングは、生徒を放置する指導ではない

教育コーチングに対して、
「生徒にすべて考えさせるのは無責任ではないか」
「好きなようにやらせたら、勉強しなくなるのではないか」
と感じる人もいるかもしれません。

しかし、教育コーチングは、生徒を放置する指導ではありません。

生徒の目標を確認し、現状を整理し、必要な情報を伝え、行動を具体化し、実行後も振り返りをサポートします。

先生が行動を決めるのではなく、生徒が決められる状態をつくるのです。

先生が細かく指示し続ければ、短期的には生徒を動かせるかもしれません。

しかし、先生がいなくなったあとも学び続けられる生徒を育てるには、自分で考え、選び、行動する経験が必要です。

教育コーチングは、生徒の代わりに馬車の行き先を決めることではありません。

生徒がどこへ行きたいのかを一緒に確認し、その場所へたどり着けるようにサポートすることです。

教えるだけではなく、生徒の中にある考えを引き出す。

指示するだけではなく、自分で決められるように支援する。

その関わりの積み重ねによって、生徒は「先生に勉強させられる状態」から、
「自分の目標のために学ぶ状態」へ変わっていきます。

次の章では、「教育コーチングで何が変わる?生徒・保護者・講師にもたらす影響」について紹介していきます。

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この記事を書いた人

沖津 亮佑のアバター 沖津 亮佑 合同会社ドドド 代表

合同会社ドドド代表 | 教育者・親・高校生にコーチングを提供 | 水戸市 大学受験専門塾 | オンライン 薬学部受験専門塾 | 全国の学習塾・学校でコーチング研修実施 | フォローすると、地域最強の塾経営者になれます

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