「うち、ユニバ嫌いやねん。」 | 生徒に対して決めつけた発言をした末路

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コーチングですべての中高生に選択肢を与える会社、合同会社ドドド代表の沖津です。
学習塾経営をしながら、全国の学習塾の講師や学校の教員の方々を対象に、コーチング研修をしています。
「楽しいに決まっている」「頑張りたいはず」と、生徒の気持ちを決めつけてしまった経験ありませんか。実際の生徒との会話をもとに、教育者が思い込みを手放し、生徒の本音を引き出すための傾聴と質問を紹介します。

この記事で分かること
・誰もが持っている固定概念
・教育現場には多くの思いこみが存在する
・決める声かけと、本音を引き出す質問
・生徒の言葉を引き出す質問
・固定概念を薄めることが、信頼関係に繋がる

「きっと楽しいだろう」
「本人も合格したいと思っているはずだ」
「テストの点数が上がれば、うれしいに決まっている」

僕たちは日々、さまざまな経験や価値観をもとに、目の前の出来事を判断しています。

相手の表情や言葉から気持ちを想像することは、人と関わるうえで必要な力です。
しかし、自分の中にあるイメージを、そのまま相手の気持ちだと思い込んでしまうと、生徒を傷つけてしまうことがあります。

特に、学習塾や学校の先生は、生徒にとって身近な大人です。

先生が何気なく発した一言によって、「この先生も自分のことを分かってくれない」と感じ、心を閉ざしてしまうこともあります。

今回は、ある女子中学生が発した、
「うち、ユニバ嫌いやねん」
という一言から、教育者が生徒と関わるときに気をつけたい「思い込み」について紹介します。

目次

「ユニバに行く=楽しい」とは限らない

以前、入塾して間もない大阪在住の女子中学生と、授業の中で話をしていたときのことです。
翌日が休みだったため、何気なく聞きました
「明日は休みだけど、どこかに行くの?」

すると、その生徒はこう答えました。
「友達にユニバに誘われたので、行ってきます」
ユニバとは、みなさんが想像する通り、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのこと。

ここで、私が「ユニバは楽しい場所だ」というイメージだけで会話をしていたら、次のように返していたかもしれません。
「いいね。楽しみだね」
「友達とユニバなんて、最高じゃん」
「よかったね。思い切り楽しんできて」
どれも、一般的には不自然な返答ではありません。
実際に、ユニバへ行くことを楽しみにしている生徒であれば、そのまま会話が盛り上がったでしょう。

しかし、僕はそのとき、生徒の違和感を感じました。いつもは目を見て話しをしてくれているのに、
その時は僕から目をそらしたような場所を見つめているような。

その違和感から、僕はこう質問しました。
「そうなんだ!ユニバに誘われたとき、どんな気持ちだった?」

生徒は少し考えたあと、答えました。
「んー。とりあえず行く、という感じです」

僕が
「なるほどね、とりあえず行くって感じなのか」
と返すと、

彼女から出てきたのが、
「うち、ユニバ嫌いなんです」
という言葉でした。

多数派の考えが「固定概念」を作る

彼女が通っていた学校は、ユニバから比較的近い場所にありました。

周囲の友達の多くは年間パスポートを持っており、学校の先生も授業中にユニバの話をすることがあったそうです。

ほとんどの生徒にとって、ユニバは身近で楽しい場所でした。

しかし、彼女はハリー・ポッターなどの作品をほとんど見たことがなく、友達に誘われてユニバへ行ったときも、楽しさを感じられなかったと話してくれました。

「何回か友達に誘われていったけど、入場料が高いだけで、何が楽しいのか分からなかった」

彼女は、そのように話してくれました。

ユニバが好きな生徒が多いことと、目の前の生徒もユニバが好きであることは、同じではありません

クラスのほとんどの生徒が好きだったとしても、全員が好きだとは限りません。

頭ではわかっていても、いざその場になると「この生徒もきっとユニバが好きだ」という固定概念で話を進めてしまうことが意外とあります。

多数派の意見を、その場にいる全員の意見として扱ってしまうのです。

学校の課題で感じた違和感

彼女がユニバに対して苦手意識を強めるきっかけとなった出来事が明確にありました。

学校の英語の授業での課題でした。

先生がオリジナルの英作文問題を出したそうです。問題は、次のような内容でした。

「お母さんが、あなたをユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ連れて行ってくれることになりました。そのときの感謝の気持ちを『Thanks for』に続く形で書きましょう」

先生としては、生徒にとって身近な出来事を題材にした方が、英作文に取り組みやすいと考えたのかもしれません。

生徒が楽しく取り組めるように、ユニバを題材として選んだのかもしれません。

しかし、彼女にとって、ユニバへ連れて行ってもらうことは、必ずしも感謝したくなる出来事ではありませんでした。

その話をしてくれた後、彼女は少し寂しそうに笑いながら、こう言いました。

「私にとっては、NO THANKS FORなんです」

英語として正しい表現かどうかという話ではありません。

この言葉には、自分の気持ちとは異なる感情を書くことを求められた、生徒なりの違和感が表れていました。

生徒は、自分の本当の気持ちを抑えながら、無理に感謝の英文を作ったそうです。
そして、この出来事をきっかけに、ユニバをさらに嫌いになってしまいました。

もちろん、問題を作った先生に、生徒を傷つける意図はなかったでしょう。

むしろ、生徒が関心を持ちやすい題材を使おうとしたのだと思います。

それでも、「ユニバへ行けるならうれしいはずだ」という前提が、1人の生徒に疎外感を与えてしまいました。

教育現場には多くの「思いこみ」がある

このような思い込みは、ユニバの話に限りません。

教育現場には、先生側が無意識に持っている「思いこみ」が数多くあります。

「志望校に合格したいなら、もっと勉強したいはずだ
「点数が上がれば、生徒は喜ぶはずだ
「部活動を引退したら、受験勉強に集中できるはずだ
「保護者に期待されれば、本人も頑張れるはずだ
「宿題をやってこないのは、やる気がないからだろう


こうした考えが、すべて間違っているわけではありません。

実際に当てはまる生徒も多くいます。

しかし、「当てはまる生徒が多い」ということと、「目の前の生徒にも当てはまる」ということは別です。

例えば、成績が上がったのに喜ばない生徒がいたとします。

先生が「点数が上がったね!すごいね!よかったね~」と言ってしまえば、生徒の本当の気持ちは見えなくなります。

単純な間違いが多く、もっと取れたと思っているかもしません。
本人は、目標点に届かなかったことを悔しがっているのかもしれません。
周囲から期待されることに、プレッシャーを感じているのかもしれません。
たまたま当たった問題が多く、実力がついた感覚を持てていないかもしれません。

表面に現れた結果だけを見て、生徒の感情まで決めつけてしまうと、その生徒に必要な声掛けやサポートを誤ってしまう可能性があります。

生徒の感情の思いこみ、好き嫌いの思いこみが、一番危険です。

生徒から、「先生は私のこと何も分かっていない」
と思われてしまうかもしれません。

「思いこみ」で話す前に、感情を確認する

生徒との会話で大切なのは、先生が気持ちを当てることではありません。

生徒本人に感情を確認することです。

「友達とユニバに行く」と聞いたとき、「楽しみだね」
と先生側が感情を決めるのではなく、

「誘われたとき、どんな気持ちだった?」
と質問する。

テストの点数が上がった生徒に対しても、
「嬉しかったんじゃない?」
と聞くのではなく、

「今回の結果を見て、どう感じた?」
と質問する。

志望校についても、
「○○高校、絶対に合格したいよね?」
と同意を求めるのではなく、

「今、○○高校についてどう考えている?」
と確認する。

少し質問の形を変えるだけで、生徒が話せる内容は大きく変わります。

「楽しかったよね」「うれしいよね」という質問には、先生が期待している答えが含まれています。

そのため、生徒は本音よりも、先生が求めている答えを優先してしまうことがあります。

一方で、「どう感じた?」「どのように考えている?」という質問には、決められた正解がありません。

生徒は、自分の感情を自分の言葉で表現できます。

このような質問の選択を増やし、生徒からの発言を引き出すこともコーチングスキルの1つです。

生徒の言葉を引き出す質問のポイント

生徒の本音を引き出すためには、質問の内容だけでなく、質問後の関わり方も重要です。

すぐに答えを求めない

自分の気持ちを言葉にすることが苦手な生徒もいます。
質問をしたあとに沈黙が生まれると、先生は不安になり、別の質問を重ねたくなるかもしれません。
しかし、その沈黙は、生徒が自分の気持ちを探している時間である可能性があります。
急かさずに待つことで、本人なりの言葉が出てきます。
無言の時間を恐れずに、いつもよりも5秒待つ意識をしましょう。

生徒の発言を否定も肯定もしない

生徒が、
「別に合格したいとは思っていない」
「勉強しても意味がないと思う」
と話したとき、「それはダメだよ」「それはないよ」などと、すぐに考えを変えようとしてはいけません。
まずは、
「そう感じているんだね」
「そう思うようになったきっかけはある?」
と、背景を理解することが大切です。
肯定や同意をする必要はありませんが、生徒がそう感じている事実は受け止める必要があります。

先生の「思いこみ」で評価しない

生徒が話した内容に対して、
「それは良い考えだね」
「その考え方は良くないよ」
とすぐに評価すると、生徒は先生に認められる答えを探し始めます
教育コーチングにおける対話の目的は、先生が正解を与えることだけではありません。
生徒自身が、自分の気持ちや考えを整理することです。
まずは評価せず、本人がどのように考えているのかを丁寧に確認します。

「思い込み」や「固定概念」は誰しもが持っている

人が、自分の経験や価値観をもとに物事を判断することは自然なことです。

先生にも、これまで出会った生徒との経験があります。

「この表情をするときは悩んでいることが多い」
「宿題が止まっているときは、問題が難しすぎる場合がある」

こうした経験による予測は、生徒を理解する手がかりになります。

そのため、思い込みを一切持たないことを目指す必要はありません。

大切なのは、自分の予測を事実として扱わないことです。

「きっとこうだ」と決めつけるのではなく、
「もしかすると、こう感じているのかもしれない」
と仮説として持ち、本人に確認する。

この姿勢が、生徒理解につながります。

これは、勉強に限った話ではありません。

例えば、コーヒー。

コーヒーと聞いて、どのようなイメージを持ちますか?

数年前までの僕だったら、
「苦い」「くさい」「大人しか飲まない」
のようなネガティブなイメージばかりを持っていました。

しかしある時、おいしいコーヒー屋さんに出会いました。

茨城県日立市にある、ただいまコーヒーというコーヒー屋さんです。

オーナーが僕と同い年で、同じ茨城県出身ということもあり、
つい行きたくなるお店です。

ただいまコーヒーと出会ってからは、カフェに行ったらコーヒーを飲むようになりました。

昔持っていたネガティブなイメージはなくなり、
「美味しい」「落ち着く」「作業がはかどる」
のようなポジティブなイメージに変わりました。

このように、同じ人でもタイミングによって、その言葉に対するイメージは変わっていきます。

信頼関係は、何気ない会話からつくられる

先生と生徒の信頼関係は、特別な面談の時間だけでつくられるものではありません。

授業前の雑談、休憩時間の一言、宿題を確認するときの質問など、日常の小さなやり取りの積み重ねによってつくられます。

もし、ユニバへ行くと話した生徒に、
「よかったね。楽しんできて」
とだけ伝えていたら、その生徒がユニバを嫌いであることは分からなかったでしょう。

それどころか、生徒に、
「この先生も、ユニバが好きで当然だと思っている」
「自分の気持ちは分かってもらえない」
と感じさせていた可能性があります。

一方で、
「誘われたとき、どんな気持ちだった?」
と質問するで、生徒はようやく自分の気持ちを話せます。

先生が自分の考えを押しつけず、話を聴こうとしてくれた経験は、生徒に安心感を与えます。

この先生なら、正直に話しても大丈夫かもしれない。
分からないことや、うまくいかなかったことも相談できるかもしれない。

そう思える関係ができて初めて、学習上の悩みや将来への不安も話せるようになります。

教育コーチングにおける信頼関係は、単に先生と生徒が仲良くなることではありません。

生徒が自分の状態を正直に話し、必要な支援を受けられる関係をつくることです。

生徒の感情を聴くこと、これを大事にしていきましょう。

まとめ|「固定概念」に流されず、生徒に確認する

僕たちは、目の前の生徒について、先生自身の経験や、生徒の今までの行動から、
さまざまな予測をしながら関わっています。

しかし、自分の中にあるイメージと、生徒が実際に感じていることは、必ずしも同じではありません。

ユニバへ行くからといって、楽しみとは限りません。
成績が上がったからといって、満足しているとは限りません。
宿題をやってこないからといって、やる気がないとも限りません。

教育者に必要なのは、生徒の気持ちを正確に言い当てる力ではなく、分からないことを本人に確認できる姿勢です。

「どんな気持ちだった?」
「今回の結果を、どう感じている?」
「今、一番困っていることは何?」

こうした短い質問が、生徒の本音を引き出します。

そして、生徒の言葉を否定も肯定もせずに聴くことが、信頼関係の始まりになります。

自分の中にある「普通」「当然」「みんな」を、目の前の生徒にも当てはめていないか。

生徒と話すとき、一度立ち止まって考えてみてください。

先生が固定概念や思い込みを手放したとき、これまで見えていなかった生徒の本音が、少しずつ見えてくるかもしれません。

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この記事を書いた人

沖津 亮佑のアバター 沖津 亮佑 合同会社ドドド 代表

合同会社ドドド代表 | 教育者・親・高校生にコーチングを提供 | 水戸市 大学受験専門塾 | オンライン 薬学部受験専門塾 | 全国の学習塾・学校でコーチング研修実施 | フォローすると、地域最強の塾経営者になれます

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